劇場紙風船 おふろ場


SWITCHonExcite劇場紙風船に書いた記事の、おまけページです
観たもののリストや各種思いつき、特集記事などは大福帳に載せています

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2006-11-01-Wed-18:17

「認めがたい」のナゾと、シンクロ4つの種目

記事(全3回)はこちら
劇場紙風船 
FINA Synchronised Swimming World Cup 2006
第1回 芸術性ってなんですか 音楽と身体 
第2回 芸術性ってなんですか イメージと身体
第3回 観戦雑記

以下すべてフリーコンビネーションの演技中の画像です。
クリックすると大きくなります。
カナダ

今回、主催側に画像提供をお願いしたところ、なんとCD-ROM3枚分の画像が届きました。SWITCHonExciteの方には文章の内容に沿った画像をふんだんに、また1?3位国以外の競技画像も載せることができました。改めてお礼申し上げます。

ジャンプしているイタリア選手の画像を観ると、とても日焼けしているのがわかります。皆さん屋外の大会で焼けたり、聞くところによれば外国のパンキッシュな選手はタトゥーを入れていたりするので、身体も濃い目のカラーでメイクアップすることがあるんだそうです。
そんな会場でも、「マーメイドプリンス」のどうらんには別格の厚みを感じました。


「認めがたい」のナゾ

シンクロのルールには、次のように採点基準を表す言葉があります。
秀でている 9.4?9.0 大変良い 8.9?8.0 良い 7.9?7.0 充分 6.9?6.0 など、一番上は「完璧 10」、下は「完全な失敗 0」まで12段階に分かれています(藤井来夏公式サイト シンクロのルールに表が掲載されています)。

その中で異彩を放っている言葉を見つけました。

認めがたい 1.9?0.1

他の11の言葉は「ストロークの完遂度は」など選手の動作が主語になって、「(審判員である)私」は主語になりません。でも「認めがたい」は「私」が主語でも意味が通じます。

もし尊敬する先輩マーメイドに「私は認めがたい」などとジャッジされたら、技術的・科学的に分析可能な「完全な失敗」より落ち込みそうです。主語になり得る単語が増えると、一気に物語が広がりはじめます。

「認めがたい」は、やはり特殊な印象を受ける言葉のようで、友人と楽しい話で盛り上がりました。
多分私たちが放送で目にするようなトップスイマーの大会で、下から二番目の評価「認めがたい」に相当する動きは、あまり観ることはないのでしょう。

でもたとえば、ある審判員(かつてとても優秀な選手)の後輩が、大会で神業的な泳ぎをしたとします。
すごさの一部始終がわかった審判員は、すぐに讃えられない感情が噴出してしまい、スタンディング・オベーションの中、ギィィとハンカチ噛みながらマーメイド泣き…。そんなシーンにさえ「認めがたい」はよく似合います。

カナダ
フォーメーション:NAMIKOSHI-SAN
…だったらいいな

シンクロにも、採点競技につきものの「順位が決まっているのではないか」という指摘があるそうですが、根拠の一つはもしかしたらこんなことかもしれません。審判員は現役時代、体力・浮力キープのためによく食べる→引退とかDNAとか→人によっては体型の変化が。そして彼らも人の子…

理想的な体型の美しく若い選手が泳ぎ、人気のあるイメージにばっちりコミットして客うっとり(しかし若干大味) 。と、その盛り上がりに対してなぁんだか面白くない気持ちがどこかに
→点数低め 3位 

小さな身体で、地味に難しいことをやっている。よくわかってない客はいまいちな反応。これは通のシンクロ
→点数高め 2位

しかし金メダルはどうかと…。
そこでロシアですよ
→満点 1位

私は一回現場で観ただけですが、身体の同調性が高いと、力強さが増すのを感じました。それは水音にも現れます。水の抵抗を身体の芯から断ち切るような力は、動きをよりクリアに伝えます。音楽のダイナミクスに同調しているかどうかは、動きがクリアに見えないと判断しにくいです。それに水からたくさん身体が出ると、やりたいこともはっきりします。

日本

同じ角度で水面に上げられた複数の脚、難しい回転でも軸が微動だにしないたくさんの脚を観て思い出したのは「in the groove」です。グルーヴの語源になった言葉で、レコードプレーヤーの針が、レコードの溝を正確にトレースしている状態を表します。脚を針にたとえれば、競技中に「真っ直ぐ」「きれい」と高く評価される脚は、音楽にぴたあっとハマっている状態です。これが連続すると、泳ぐ身体にはグルーヴが生まれます。

ということが近くで観ると如実にわかるので、こういう採点は、やはりコントですとか劇中劇の領域に入ってくると思われます。
シンクロの歴史に照らしても、強豪国には強さを裏付ける理由があります。

「1956 年にFINA(国際水泳連盟)でシンクロが種目として認められ,1973 年の第1回世界水泳選手権(ベオグラード,ユーゴスラビア)以来,1996 年までの24 年間,いち早くシンクロに取り組んでいたアメリカ,カナダ,日本の3 強時代が長く続いた.」

「1996 年のアトランタオリンピックまで,アメリカ,カナダ,日本の世界3強時代が長く続いたが,1990 年頃からヨーロッパ勢が急速に力をつけ始め,1995 年のワールドカップで初めてロシアが3 強の一角である日本を崩し,ソロ,デュエット,チームの全種目で銅メダルを獲得した.ちなみにジュニアにおいては,ロシアは1993 年世界ジュニア選手権でソロ,デュエットですでに世界を制覇した.」

「翌年の1997 年,世代交代に失敗したアメリカ,カナダが大きく後退し,ロシアが全種目で世界のトップに立った.日本はナショナルB チームをうまく鍛えていたため,世代交代後も競技力を落とすことなく2 位につけた.このときから現在に至るまで約10 年に渡り,ロシアと日本の2 強時代が続いている.」
引用は後述「シンクロのノーティカルチャート」より

日本


シンクロ4つの種目について

ここではルーティン競技のみ取り上げます。音楽を使わずに、技の完成度を競うフィギュア競技には触れません。

1. ソロ(1人)
2. デュエット(2人)
3. チーム(4?8人)※8人に満たない場合は減点対象

テクニカルルーティン(TR)とフリールーティン(FR)からなる。

テクニカルルーティン
規定要素を順番に行っていく。
はじめにストロークや規定要素などの完遂度(エクスキューション:EX)、つぎにそれ以外の同調性や難易度などの総合印象度(オーバーオールインプレッション:OI)が採点される。

フリールーティン
音楽に合わせて自由に演技する。
完遂度・難易度・同調性などの技術点(テクニカルメリット:TM)、構成や音楽の使い方・プレゼンテーションなどの芸術点(アーティスティックインプレッション:AI)の2回採点が行われる。

採点の比重は、たとえばTMの同調性(一人または複数の競技者、音楽との同調性)なら、ソロ10%、デュエット20%、チーム30%というように決められている。
テクニカルルーティンEX・OIともに5人ずつ、フリールーティンTM・AIともに5人ずつ審判員がいる(7人制の場合もある)。

採点は、0.1併用の10点満点。
EX・OI・TM・AI各得点は、それぞれの最高と最低(各1)を除いて合計し、ジャッジ数より2少ない数で割り、5を掛けて算出する(小数第三位まで)。
EX・OIの合計得点に0.5を掛けて出た数字がテクニカルルーティンの得点(小数第三位まで)。
TM・AIの合計得点に0.5を掛けて出た数字がフリールーティンの得点(小数第三位まで)。
テクニカルルーティン(50%)、フリールーティン(50%)の合計得点(100点満点)で順位が決まる。

例 FINA Synchronised Swimming World Cup 2006 日本「チーム」テクニカルルーティンの結果から(チーム種目結果のPDFはこちら

EX エクスキューション
9.7 9.8 9.8 9.7 9.8 9.7 9.8(7人)

9.7 9.8 9.8 9.7 9.8 9.7 9.8
最高と最低(各1)を除く

(9.8+9.7+9.8+9.7+9.8)÷5×5=48.800
残りを合計して、ジャッジより2少ない数で割って5を掛ける
これがEXの得点
              
同じ方法でOIも計算する
9.8 9.7 9.7 9.8 9.7 9.7 9.7

(9.7+9.8+9.7+9.7+9.7)÷5×5=48.600

(48.800+48.600)×0.5=48.700
 EX     OI         TRの得点

同じ方法で算出したTMとAI
(49.100+49.000)×0.5=49.050
 TM     AI         FRの得点

48.700+49.050=97.750
 TR    FR    最終得点

※世界選手権では、次回の2007年メルボルン大会から各種目のTR、FRそれぞれで順位を競う

参考にしたサイト
FINA Synchronised Swimming World Cup 2006
「シンクロ講座」では、3種目のTRの流れと、各要素個別の紹介を動画で観ることができます。

All About Synchro
2002年度改定以前の得点算出方法も、見やすく解説されています。ややこしさにうなだれました。「最終結果」に掲載されている同点優勝の話は大変興味深いです。

財団法人日本水泳連盟

FINA Synchronised Swimming

ロシア

4. フリーコンビネーション(10人)←今回観てきた種目

予選と決勝で一回ずつ演技する。
採点はフリールーティンと同じくTMとAI。2つの合計得点で順位が決まる(記事最後の競技結果を参照のこと)。
ソロ・デュエット・チームそれぞれのパートが流れで楽しめるほか、トリオパートもある。
「究極のシンクロ」とも呼ばれるらしい。

一方で「本来の「シンクロナイズド(同調)スイミング(水泳)」の言葉が意味する運動形態が崩れ,この競技にふさわしいプログラムであるかどうか個人的には疑問」との声もある。
Japanese Journal of Sciences in Swimming and Water Exercise
No.8, 2005 本間三和子「シンクロのノーティカルチャート」より

スペイン


「シンクロのノーティカルチャート」を読んで 部外者の感想

プールでフリーコンビネーションを観た時、脇で立ち泳ぎをしながら待機して、鼻クリップを直している選手の姿に目がいった。
実際の運動形態が、本来の言葉の意味とずれる点では、この論文の指摘どおりだと思う。

しかしすぐに同じ問題意識をもったかというとそんなことはなくて、まずデュエットなどにはない特徴的なシーンだと思い、万が一鼻クリップがとれてどこかに行ってしまい、水着に挟んだ予備のクリップも流れ、そのまま泳ぐはめになったらえらいことだろうなと。

シンクロの歴史を読むと、昔々のアクアティックバレエ(男性が始めた)とか、そこまでさかのぼらなくても60人の群舞泳法で「シンクロナイズド・スイミング」と命名された頃、スイマーはゆっくりとした動きで同調していたらしい。

その後アメリカ・カナダの正確な技術と同調性を究めるシンクロから、90年代ロシアの台頭と席巻で、多様で複雑なオリジナリティのある動作、スピーディな展開・移動・パターンチェンジ、コンパクトなパターンというロシアの特徴が、そのまま現在のシンクロの趨勢になったという。

実にいろいろ変わってきたようだ。スイマーが同調するために使う意識も、単純に細かくなって増えただけとは思えない。となると「シンクロの原点」とか「本来のシンクロ」って、いつの何を指すんだろうか。

フリーコンビネーションがシンクロ競技に加わったのは、2001年。
もしかしたら、業界内で「同調」という言葉の捉え方に幅が出てきたのかもしれない。あるいはもともと開きがあったとか。一つの超越的なシンクロ原理があって、それに基づいてプログラムが決められていたら、そもそも「シンクロのノーティカルチャート」で指摘されているような疑問は出ないだろう。

シンクロの原理は後退していってるのかもしれないが、それでもいちおう原理はあった方がいいという場合、言葉の意味と運動形態の一致に重きをおくという考え方も含めて、何をシンクロナイズド・スイミングの礎とするか。
多分一筋縄でいかない問題なんだと思う。新しく整備するという方法もあるだろうし、フリーコンビネーションの是非を問うと、こういう問題にいきつく気がする。

スペイン


あと、今回観に行った経緯とか
(観戦雑記はSWITCHonExciteの3回目に書きます)

競技の合間に、手に手に弁当を持ったジュニアの選手たちが入ってきて、プールを挟んで向かい側の客席に座りました。それでも4?5割ぐらいの入りだったと思います。
私は友人から誘いがあって観ることができたのですが、自分の仕事に鑑みて、自発的に行ってしかるべきイベントだったと感じました。
こういう慢心があるから、私は近藤玲子水中バレエ団を見逃したのです。機会はあったのに。観てたら何か書けたのに。

屋内はそんなに暑くもなく、観ていて快適でした。蒸し風呂の芝居小屋やク・ナウカ荒天時の野外ステージ、大きな地震が起きたら確実にまずいスリリングな歌舞伎座、身のこなしを覚えないと売店付近で年配の客からタックルが入る歌舞伎座の方が、きつさでは上回ります。

ロシア


なお、フリーコンビネーション決勝の結果は以下のとおりです。

順位

国名

TM

AI

得点

1

ロシアRUS

49.400

49.300

98.700

2

日本JPN

48.700

48.700

97.400

3

スペインESP

48.300

48.400

96.700

4

カナダCAN

47.500

47.800

95.300

5

イタリアITA

46.600

46.700

93.300

6

ウクライナUKR

46.100

46.200

92.300

7

 フランスFRA

44.800

45.300

90.100

8

ブラジルBRA

44.200

44.700

88.900

9

スイスSUI

43.800

43.800

87.600

詳細や予選の結果は、こちらをご覧ください。
9月14日 フリーコンビネーション 競技結果

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【 シンクロナイズド・スイミング FINA Synchronised Swimming World Cup 2006 】

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